第56章 範司と火口
「……確かに気になるな。
凛はどういう男が好みなんだ?」
エルヴィンに問いかけられ、
考えを巡らせてみる。
今までそんなこと
考える間もなく流されてきたから
自分の好みの男性像がどんなものか
想像しにくい。
「どうだろうなぁ……」
小さく呟いたその時、
ドアがゆっくり開く音が聞こえ、
自然と玄関の方に目を向けた。
「………すいません。
財布、忘れました。」
少し息を切らした火口の一言で、
範司は肩を震わせて笑い始める。
「どれだけ動揺してたの?
でももう凛にバラしちゃったよ。
火口が凛のこと
可愛いって言ってたこと。」
「はっ、範司さん?!
何してくれてんですか!!」
範司の発言を聞くなり、
火口は範司の肩を前後に激しく揺すった。