第56章 範司と火口
「凛、おはよう。
映画が始まってすぐ寝てたよ。」
範司は凛の頭をポンポンと叩く。
範司の発言を受けて少し考えを巡らすが、
寝たときの記憶がなかった。
気を失うような勢いで寝たのかも知れない。
ふと隣にいる火口君に視線を向けると、
何故か目を逸らされた。
「……あれ、もしかして私寝てる間に、
火口君に手出した?」
冗談めかした口調で火口君に問いかけると、
一気に赤面され、冗談を冗談で
済ませる自信がなくなってくる。
だけど、寝ている間に手を出すなんて、
そんな器用な真似が
自分に出来るとは思えない。
「おい、モブリット。
その反応を続けると
凛が手を出したことを
肯定する意味に取られるぞ。」
リヴァイがそう言って火口の肩を叩くと、
「す、すいません!違います!」
火口はそれだけ言って、勢いよく立ち上がった。