第54章 安息の時間
「……凛。
お前は余計な心配をしなくていい。
そんなことより、もっと自分のことや
これからのことを考えろ。」
「……うん。」
小さく返事をした凛の体温が
身体の中に入り込み、
そっと背中に回された手が
じわじわと全身を温める。
女を抱きしめて安心感を覚えたことなどないが、
凛を抱きしめていると
自然と穏やかな気持ちが込み上げた。
こんな感情を抱くから、
どんどん凛を離したくなくなる。
分かっていてもどうすることもできない。
……いや、このままでいいとすら
思ってしまう。
それくらいこの気持ちは心地良かった。