第42章 甘い文字
その時。
そっと肩を叩かれ、
再び凛に視線を向ける。
『……面白くない?』
小声でそう問いかける凛の、
不安そうな表情が目に留まり、
すぐに首を横に振った。
視線はスクリーンに向いていた筈なのに、
内容を聞いていなかったことが
バレてしまったのは
凛も人の顔色を読み取るのが
得意だからだろう。
『本当に?他の場所行く?』
小声な上に、
映画の音声で掻き消されているから
声は全く聞こえないが、口の動きで
何を言っているかは大体わかる。
膝の上に置かれた凛の手をそっと握ると、
手のひらに覚えたばかりの平仮名を
ゆっくり書いた。