第17章 心を乱す存在
「……どの屋台も気になるな。
俺たちの世界にはないものばかりだ。」
エルヴィンは周囲からの艶を帯びた視線を、
特に気にする様子もなく、
私の手を握ったまま平然と答える。
「……エルヴィン。
ちょっと人が多くなってきたし、手、離す?」
「何故だ?普通逆だろう。
人が多いなら、はぐれないように
手を繋ぐものじゃないのか?」
「……いや、そうなんだけどね……」
このまま手を繋いで歩くなんて、
自傷行為に近い。
いつか擦れ違い際に、
つい傷付いてしまうような言葉を
投げかけられそうな気がした。
この違和感を自覚していても、
雑言なんて耳にしたくない。
自慢じゃないが、
人一倍メンタルは弱い気でいる。
今のうちに友達を装うのが得策だろう。