第16章 命の宝庫へ
エルヴィンの瞳を見つめていると、
色んな感情が込み上げてくる。
「……エルヴィン、ごめん。」
やっと出た言葉は、それだけだった。
「何だ。君が謝ることは何もないだろう。」
私の手を握る力が強まったように思えて、
自然と強く握り返す。
「……まだエルヴィン達が
ここに来て4日目なのに、
二人が元の世界に戻ることを考えると、
寂しくなってくる。」
死ぬ準備をする為に、
あの田舎に越して来たはずが、
二人と出会ったことで、
生きようとする気持ちが、じわじわと
湧き上がって来ているようだった。
何もかもを捨てるのは容易いと思った。
“何もかも”という程のモノも、
人との関係も、持っていなかったから。
そんな自分を捨てるのも簡単だと思ってた。
……なのに、今は捨てるのを躊躇っている。
もう少しだけ、二人の側に居たい。
生きることに希望を見出そうと、
精一杯生きている二人の側に居たい。