第16章 命の宝庫へ
「……自分に自信を持てる要素がないからね。
エルヴィンみたいに
強い志を持ってる訳でもないし、
リヴァイみたいに揺るぎない意思を
持ってる訳でもない。」
「そんなもの持っていなくても、
君は素敵な女性だと思うが。」
またしてもネガティブ発言をしたにも関わらず、
エルヴィンは温和な表情のまま、
私の目を見つめる。
「俺は君と居ると、
すごく穏やかな気持ちになれるんだ。
急にこの世界に飛ばされて、
戸惑う事ばかりなはずなのに、
君の隣に居ると、そんな気持ちが
薄れるどころか、なくなったよ。」
「……それは言いすぎでしょ?」
「いや。そんなことはない。
こうしてずっと君の隣に居たら、
自分の目指す場所を
いつか忘れてしまうんじゃないかと、
少し怖くなる。」
エルヴィンは水槽に目を向けたまま、
私の手をそっと握った。