第3章 逸脱した世界
ふと男性二人に目を向けると、
さっきまで服にも顔にも
ベッタリと付着していた血が
なくなっていることに気付く。
『えっ、見間違い?……な訳ないよね……?』
頭の中に?が飛び交い、
自然と眉間に皺が寄った。
怪我をしていないとなれば、
救急車を呼ぶわけにはいかない。
この雨の中、空き巣を外へ放り出す
勇気などないし、
警察を呼んで、平和な田舎を
騒然とさせるのも気が引ける。
第一眠っているんだから、悪さはしないはずだ。
取り敢えず今日のところはこの部屋で
そっとしておいた方がいいだろう……
隣の部屋から布団を引っ張り出し、
二人の側に布団を敷く。
何で泥棒相手に
こんなことをしているんだろう……
そんなことを思いつつも、
血まみれだったように見えた人間を
何もせずに放っておく、
なんて選択肢は用意できず、
黒髪の男性を、布団の上まで転がした。