第3章 逸脱した世界
再び、ゆっくりふすまを開ける。
家具が何もないどころか、
お札の一枚も貼られていないその部屋には、
人が二人、寄り添うようにして寝転がっていた。
自分の位置からでは、
灯りを向けてみないことには
それが男なのか女なのかすら分からず、
足音を殺して二人に近付く。
『どこから侵入されたんだ……
もしかして、おじいちゃんが
老人ホームに行っていた時から、
この家で暮らしてたとか……?』
無茶苦茶な憶測だが、こんなド田舎だ。
そんな自由な空き巣に入られても、
きっと誰も気が付かないだろう。