第10章 奔放な我慢
「キスまでで止められるように努力する。」
「……ん?
……いや、そういう問題じゃ……。」
「俺たちの世界で、キスは挨拶みたいな」
「それは嘘でしょ。」
エルヴィンが言い終わる前に
鋭く突っ込みを入れると、
頭上から小さく吹き出す声が聞こえた。
「……ダメだな。君には敵わないよ。」
顔を上げると、
楽しそうに笑うエルヴィンの顔が目に留まり、
少しの安心感を覚える。
「君は流されやすいと言っていたが、
意外と流されてくれないらしい。」
「……最初は流されかけてたけど。」
「だが、結局キスすらさせて
もらえなかったじゃないか。」
エルヴィンの不満気な声を聞き、
小さく笑みが零れる。