第11章 自立しないと。
「とはいったものの…」
何処に行けばいいんだと途方に暮れていた。
大切な居場所を離れてしまった。小娘一人の為に時間を割いてくれるのはとてもうれしかったけどそれが原因で何か事件でも起こしてしまったら申し訳ないし、なにも手伝わなくていいと言われたもののただ飯は本当に嫌だった。
「えっと、どうしよう、携帯…」
電源を切っていた端末を立ち上げると驚くことに20%から減っていなかった。何か意味があるのだろうかと考えてみると
「あっカメラとビデオは撮れるようにかな?」
ためしに辺りの景色を撮ってみる。
ここには似合わない機械音がパシャッと鳴るともうあとは木々のざわめきしか聞こえてこなかった。その静寂が妙にの心を侵食していくようだった。
「何処だろ、ここ」
護身用にと短剣をこしらえてくれた信玄は最後の最後まで本当に優しい人だと思う。
「……んっ、え?!」
絶対に震えることのないはずの携帯が震えだした。ディスプレイを見てみれば着信の合図のようだ。相手は、
「薫ッ!!」
そっと木陰に入り、深呼吸をして電話に出てみる。
すると向こうの声もはっきり聞こえた。時代さえ超えて薫の声が聴けるなんて、とはもう泣いていた。
『もしもし?!なの?!ねぇ!』
「そ、だよ、薫ッ」
『あんた、い、今まで何して、って泣いてる…?』
薫の怒号が聞こえたかと思えば懐かしい音や声も向こうから沢山聞こえた。
学校のチャイム音、教室でもざわついている声、担任の声、今まで気にしたことのなかったクラスの人の声。
あぁ、本当に話せているとはとても安心した。