第10章 西海の鬼は悪鬼ですか?
そして2日後、元親はにあの後一度も会うことなく帰って行った。
何度も幸村や佐助に頼んだのだが誰ものもとへ案内はしてくれなかった。も元親に会わないよう2日間部屋の中で携帯を立ち上げてゲームに明け暮れていた。
「殿、幸村にござる」
「…あぁ、幸村さん」
ようやくまともに外の景色を見られるのかとあいたふすまから心配そうにこちらを見る幸村がいた。その顔は酷く疲れているように見えた。の事でいろいろしつこく聞かれたのであろう。
「ごめんなさい、私まさか、接触すると思わなくて」
「いや、某らが油断していたからでござる。怖い思いをさせて申し訳ありませぬ」
元親は何故に興味を持ったのか。珍しいものに反応するという海賊の直観とやらなのだろうか。だとしてもあの顔は何だったのか。
「迷惑ばっかかけて困らせて、足手まといですね。私絶対戦でも役に立たないし」
「殿、落ち着いてくだされ」
もう悪循環だった。考えれば得れば考えるほど頭の中の思考回路はぐちゃぐちゃに絡まって、何を喋っているのかも判断ができない、幸村の声も聞こえない。
「それでもきっと幸村さんや小山田さんは私を守ろうとしてくれるんですよね」
次第に呂律もまわらなくなってくる。
自分の目の前にいる幸村でさえなんだか怖い存在に思えてきた。男はきっとそういう生き物なのだと変に思い込んでしまったようだ。
「でも、守られてばっかりで、お返しが何もできなくて」
「殿、」
「もう、嫌になっちゃうなぁ…!」
「殿!もうやめてくだされ!!」
顔を上げると幸村はまるで自分の事のように切羽詰まったような苦しそうな顔をしていた。こうさせたのは自分か、とはまた目線を下ろそうとした、が
「己を卑下するような考えは捨ててくだされ、は某にとって救いなのでござる!」
気が付けば幸村の腕の中にいた。
の右側から聞こえる幸村の声は以上に近く感じて、抱きしめられているとう考えにたどり着くまで時間がかかってしまった。
泣きそうになっている幸村の声はの頭の中にこびりついて離れることはなかったという。