第9章 初めましては煩くなります
どうやら元親は見聞を広めるとか何とかで、幸村と手合せに来るらしい。同じ炎属性だからきっと惹かれたのだろう。
「アニキかぁ…凄い人に会えるなぁ…」
大体幸村と絡むと政宗や三成と会うもんだと思っていたのだが、結構飛んで西の方の人と会えるなんて。なんて幸福な事だろうかと佐助と別れた後自室で興奮気味にばたばたしていた。
きっと幸村も今からそわそわして眠れないとかいうタチなんだろうなと変な妄想をする。
「殿、小山田です」
「あ、どうぞー」
小山田が茶と茶菓子を御盆にのせてふすまを開けた。
何を伝えに来たのだろうと小山田が持ってきた茶をすすっていると
「長曾我部殿がおこしになっておりまして」
「ブフッ?!」
みっともなく驚き過ぎて見事に茶を吹きだした。
昨日の今日というさわぎではない。近々というくらいだからまぁ早く来ても一週間はかかるだろうとのんびりしていたのに、まさかもう来るとは。
思い立ったら即行動なのはとてもいいことなのだがこれでは早すぎるだろうと驚いて固まった背中がまだ丸くなろうとしない。
「え?!い、今ですか、ここに?」
「えぇ」
そんなに騒がしくないじゃないかと小山田に言えば、戦をしに来たわけではないので部下は少人数なのだという。
というか今この地に元親がいるならぜひとも試してみたいことがあった。だが忙しい時にやっては申し訳ないので、明日にでもあいさつした時にやってみるかとわくわくしていた。
「長曾我部さんはいつお帰りになられるのですか?」
「さ、さぁ…この辺りは陸でもいい土地だとかなんとかおっしゃってましてね」
しばらくいるそうな、とめんどくさそうな顔をして茶をすすった。
もしかして突然小山田が来たのは元親関連の報告だけでなく、あまり人の寄り付かないここに来れば元親はこないだろうと避けてきたと思われる。