第8章 まさかくるとは思ってない
翌朝、目が覚めると横には胡坐をかいてうとうとしている幸村がいた。
女の寝床に堂々と居座っているなんてどっちが破廉恥だと思ったが、声をかけずにこのままおいていくのは申し訳ないし、とりあえず声をかけようと寝たままの体制で幸村のひざをたたいてみた。
「…はっ、あ、お、起きていられたか!」
「今起きたばっかですよ…」
幸村は一度大きく伸びをして姿勢を整えると先ほどまで寝ぼけていたような顔は何処へやら真面目な顔になった。
「殿、先日は申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げる。は慌てて寝ていた姿勢から飛び起きるように上半身を起こして下げていた幸村の頭を無理矢理あげさせた。
こんな有名武将に土下座をさせる女子高生なんて申し訳なさすぎる。しかもこちらが一方的に体調不良になってそれをつけてくれようとしていたのに拒んだのだ。もうしわけないと謝らなければならないのはこちらだ。
「私こそ、ごめんなさい。真田さん助けてくれようとしたのに」
「…幸村、とお呼びくだされ」
「はい?」
「幸村、某の名でござる。呼んでくだされ。」
突然なんだとは思ったが、きっとこれは幸村が進歩している証拠なのだろうとは笑顔で名を呼んだ。
「幸村さん、私平気ですから。私が謝らなければならないんです」
そういえば幸村は嬉しそうにはにかんで頷いた。
「殿、某はまだ未熟にござる。おなごのことなど何一つ理解しておらぬ。」
「はい」
「…どんなことでも良い、某におなごとはどのような生き物なのかを教えてくだされ」
きっとこれも佐助や信玄に吹き込まれたことなのだろうとは苦笑いしか出て来なかった。その様子が容易に想像できたのだ。きっとあの後佐助や小山田、それに信玄から相当なお説教をもらったのだろう。