第7章 新生活も慣れれば日常
「「ただいま戻りました!」」
屋敷に入り門番に挨拶をして、裏庭で鍛錬をしている幸村とそれを眺めている佐助に伝えた。すると幸村は何処にいっていたのか知らないらしくぽかんとしていた。
「やーお疲れ様、どうだった?城下」
「すっごいにぎやかですねぇ!楽しかったです!」
椿と団子を食べて、犬を撫でて、小物屋に立ち寄ったことを楽しそうに佐助に伝える。それを横目でじーっと椿は見詰めていた。
幸村はなんのことやらと会話に入ってこようとしなかったが、小物屋に寄ったという話を聞いての簪に気が付いた。
「殿、その簪…」
「あぁ、これが小物屋の店主さんにおすすめしてもらったやつです」
へらーっと笑うと幸村はそうであったかと笑った。
佐助は幸村を見て、
「ほかに言うこと無いの?」
と言ったが幸村にはさっぱりのようで表情をゆがめた。正直のところも何を言われるのかわからなくてぼーっと幸村の事を見ていたが、結局言葉が出て来なかった。
椿は呆れたのか少し怒ったような口調と表情で
「綺麗、とか、似合ってるとか、そういった褒め言葉の事にございますよ」
と、ぶすっとしたように言った。
「え?あー…椿ちゃん、それ多分義務で言うものじゃないよ、自然と浮かぶものだし」
「いえ、この際だからはっきり言わせていただきます。真田幸村様、男として失格にございますよ」
すると幸村もむっとした表情になってしまった。
幸村と椿に挟まれるような立ち位置にいた佐助は素早く身を引いて直線状に立たないようにしていた。
「なっ、男として失格?!」
「そうでございますよ!さんの美しさに気が付かないなんて!」
「はっ破廉恥な!!」
この屋敷では上司も部下もいたいことははっきり言う人が集まっているようだ。