第7章 新生活も慣れれば日常
そこに立っていたのは椿だった。
「さんっ」
椿以外の女中はまだ苗字の様付なのだが、椿だけはようやく下の名前で呼んでくれるようになった。
私たちは友達、と言ったときには発狂しそうな勢いで畳の上にごろんごろんと悶え、それはそれはただ気持ちの悪い生き物でしかなかったのだとか。
「椿ちゃん!一緒にいってくれるの?」
「はい!さんの為なら何処へでもお供します!」
まるで犬のように目をキラキラさせているそれは、やはり何処か幸村に似ているなぁと感じるだった。
「おわっ凄い人、いつもこんなにいるの?」
「ここはにぎやかですから、毎日お祭りのように騒がしいですよ」
椿が言うには他国の人々もお忍びできたりだとかするらしいが、それを聞いた瞬間、あっフラグだなーと久々に思った。
だいたい夢小説ではこうやって城下に出ると事件に遭遇して、困っているところをお忍びできてた他国の武将に助けられて…と妄想をはびこらせていると椿は興奮した顔でとあるお店を指さしていた。
「ここは今、とても人気のある小物屋です。可愛らしい簪や御香、沢山置いてあるんです!」
やはりどの時代も女性がファッションに興味を示したり、お化粧を頑張ったりするのは本当に変わらないのだなと思った。
その人気のある小物屋にはきれいな女性達が一つ一つの品を手に取ってお試しで使ってみたり、店主と話をしてオススメを聞いてみたりと、ほとんど変わらないその光景がなんだか懐かしく思えた。