第6章 馴染むって決めたんです
むわっと酒と暑苦しい熱気が立ち込めており、思わずは下を向いてしまった。このしかめた顔を見せてはならないと思ったのだ。
「おお!、もうはじまっておるぞ!」
愉快そうな高らかな笑い声と共に信玄の声が聞こえ、においに耐えながら顔を上げると、上座から信玄は下りており身分の低いものと一緒になって酒を飲んでいた。領主として珍しい行為だと思いは少しひるんでしまったがハっとなって信玄が手招きしているのに気が付き行ってみた。
「お主も飲むか?」
「い、いえ、私は苦手なので…」
無理に飲んでしまったらどうなるかわからない。もしかしたら暴走して迷惑かけてしまうかもしれないし、よくいう泣き癖とやらだったらそれはそれで迷惑をかけてしまうし…。なんせ今まで飲んだことがないので丁重にお断りした。
「残念じゃのう」
そう言うと信玄は上座のほうへもどり、それを合図としてか散り散りとなっていた下座の者たちが丁寧に座り始めた。
「本日よりこの武田に仲間入りすることになったじゃ」
そういうと下座の者たちは嬉しそうな歓声と拍手をくれた。今までの緊張感はどこかへ吹っ飛んでしまったようには丁寧に頭を下げた。
すると信玄はを自らの横に座らせ、ここに来るまでの経緯を話せと言ってきた。
恐れることはないと小山田は見ているし、隣には信玄はいる。何となく安心して話し始めることができた。
「長くなりますが、よろしいでしょうか?」
「構わん」
は座りなおして武田軍の重臣に話し始める。
「…と、こんな、感じです」
自分は先人だということ、先人の日本には戦がほとんどないということ、そしてここは400年前の世であり異世界でもあるということ、そしてこの世に来てからあったことを細かく話した。
先人だという証拠に携帯を使い説明してみれば信玄をはじめとする重臣らは興味深そうにそれを見て感心したような笑みを浮かべた。
「苦労しておるのだな、殿は…」
「こんな若いのにのう」
次々と個々の感想がちらほら聞こえ、その中に拒絶の言葉がないのを確認すればはふう、とやっと落ち着いた顔になれた。