第18章 気持ちに嘘はつけません
泣きつかれてしまったはそのまま幸村の腕の中で寝息を立て始めた。
「…申し訳ない、何もできずに…」
幸村は涙の痕が残るの頬を優しく撫でた。
の足をみれば、先程蹴った痕であろうそれが痛々しくそこに残っていた。残るような打撲痕ではなかったが、これは女子にはできることがないようなものだった。
「…佐助」
「はいはい」
「何を申した、に」
佐助は呆れたようにまたため息をつく。
「旦那、人を簡単に信用しすぎだ。いくら旦那が惚れた女だからって心の底から信用しろだなんて忍びにはできないね」
「だ、だとしても」
幸村の言葉をさえぎるように佐助は言葉をつづける。
「いいですか?人は生まれてから死ぬまで何度も人を裏切ったり憎んだりするんだ。ちゃんだって例外じゃない」
佐助のその鋭い言葉に幸村は目をそらしながら耳を傾ける。
「その裏切る時も憎む時も人それぞれで、居場所のないちゃんならその時が不安定な今来ても可笑しくないんだ」
「だが、は俺を裏切るようなまねをするとは思えん」
「…現に織田と繋がってる前田の風来坊と接触してるんだ。何を話されているか俺にだって把握できてない。」
確かにそうかもしれない、と幸村は腕の中で眠るの顔を見つめた。
このあどけない表情を見せるもいつかは裏切るのかもしれないと考えるだけで身の毛がよだつほどの恐怖を覚えた。
「…いや、は何処にも行かぬ。」
「へぇ、その自信は何処からくるんですかねぇ?」
「俺が紅蓮の鬼と呼ばれる兵だからだ、狙った者は逃がさぬ」
それに、と幸村は続ける。
「も俺を想ってくれているからだ」
「…旦那らしいや」
佐助は苦笑いを零して布団を引いてくれた。