第17章 迎えに来たのは
「にしても今まで武田の忍びさんは何で言わなかったんだろうな」
「そりゃ最近決まったことだからじゃないの?」
当然のようにそう慶次に答えるとうーん、と唸らせた。
そんなに深く考えるようなことでもないだろうし、受け入れてくれていたという事実を知って満足していたのではそんなに気にしなかった。
「大事な娘も同然なんだろ、なのに何で今の今まで連れ戻そうとしなかったんだか…」
何がそんなに気になるのかと聞いてみれば考えすぎたと苦笑いを零した。
「今日中に甲斐にはつく?」
「あぁ勿論!だからちゃんと捕まっとけよ!」
「ああぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁ?!!!!」
行き成りスピードを上げたかと思えば、今までよりも周りの景色が早く流れているのに気が付き、思わずぎゅっと目をつぶった。ジェットコースターも苦手な類なのでこういったはやい乗り物はそんなに好んで乗ろうとしない。
実際自転車もあまり好きではないし、車なんて外の景色を眺めてても頭が混乱するし、車の匂いで酔うし、小さい頃はよく車内で大惨事を何回も起こしたものだ。
「え?!早いの苦手だった?!」
「余裕余裕!!全然平気!」
「の割に顔真っ青じゃない?!」
「前見て!!私はいいから前を見てお願い!!」
顔を見てるということは前を見ていないということだとは思って必死に慶次の胸板をバシバシ叩いた。
慶次は痛いと笑いながら甲斐への道のりを馬で駆け抜ける。
次から次へと流れていく緑の景色はそんなに変わることもなく、車から見たビルの景色を不意に思い出して、少しだけ寂しく感じた。
あぁ、ここはやはり戦国なのか、と。