第16章 放浪も悪くない
「政宗様、先ずはこの小十郎を呼んで下さいませ」
「…おう」
「前田、テメェも先ず顔を出してから入って来い」
「悪い…」
絶賛お説教中である。
話すのはいいが顔を出せという小十郎の主張は決して間違っていないので誰も口出しはできなかった。
「もだ、知ってたんなら声位…」
「ごめんなさいすみません」
小十郎なりに優しく言ったつもりだったらしいが、ヤーさん顔での優しいは常人にとってはまだ怖いところがある。
何故小十郎が慶次の訪問に気が付かなかったというと、畑の方にいて農民と収穫をしてたり茶を飲んでたりしていたので全く知らなかったらしい。
「お、おう、気を付けろよ」
が必死に頭をぺこぺこしているので若干小十郎は引き気味に言った。
「そっそうだ!俺はちゃんを迎えに来たんだけど…」
連れて行ってもいいよな?と政宗に言えば、とてつもなく嫌そうな顔をして
「おう」
と言った。
慶次はそれを見て意外そうな顔をした。
「へぇ、独眼竜の好い人かぁ」
「は?!」
は下げていた頭をガバっと引き上げて慶次を凝視する。
その顔はとても幸せそうだった。