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第15章 恋しい気持ち



義姫はその話の数日後、のそのそと帰って行ったらしい。
その帰るまでの間にも何回か顔を合わせればその話を持ち出してきて、断れば領地をやるだとか、なんなら妾の子にでもならぬかとか、わけのわからない勧誘までしてくれている。

「やっと帰ったのか…」

「お疲れ様です、さん」

あそこまで押されたらお嫁に行くかと思いました、久々に会った椿とそんな会話をしていた。
椿とはあの宴の日から顔を合わせていなかった。
何をしていたかと聞けば、どうやら佐助と会っていたという。政宗からの求婚をうけていると佐助に報告すると

「えっめんどくさっ」

と苦虫を噛み潰したような奇妙な顔でとても嫌がっていたという。
自分の事でもないのになぜ、と椿に聞いてみると

「己の娘を嫁がせに行くような気分なのでしょうね」

と椿も微妙な顔で返事をした。恐らく佐助はオカンの素質が生まれつきあるのだろう。それか極度の心配性か。

「…あー、なんか、自分勝手だけど恋しくなっちゃった」

「武田が、ですか?」

「うん。自分から飛び出してきたのにね、あそこさ、妙に落ち着くっていうか」

「…確かにここよりは随分ましですよね」

そうだね、とがクスクス笑っていると、その話を聞いていたのか政宗が声をかけてきた。いつから後ろにいたのかは知らないが椿は気配を察知していなかったのだろうか。
椿の顔をチラ見してみると、それはそれは悪そうな顔をしていた。

「いらしてたんですねぇ政宗様」

「その変な呼び方はやめろよ」

どうやら本当にこの二人は仲が悪いらしい。




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