第1章 水
「もー分隊長といい
カコさんといい…」
そうブツブツ言いながら、
モブリットは濡れた髪を掻き上げる。
不覚にもドキッとさせられた。
「ん?何ですか?」
「え、あ、何でもない。」
ジッと見つめてしまっていたらしい。
「さ、エルヴィンのとこ行こ〜」
「はぁ。
俺も分隊長起こしにいかないと。」
服をパタパタさせながら、
モブリットも後ろをついてくる。
「手のかかる上司を持つと大変だね。」
「どっちの上司のことですか?」
「何のこと?」
「あーもう、ほら、行きますよ。」
ニヤニヤが止まらない私の背中は
モブリットに押され、
寄り道することなく歩を進める。
なんて可愛い部下だろうか。
少しハンジが羨ましくなった。
いや、だいぶハンジが羨ましい。