第12章 夏の風物詩
「ちょっ!カコ!
何してんの!」
モブリットは
急に与えられた痛痒さに驚き、
カコに差し出していた
腕を引き抜いた。
「えっと…噛んでみた。」
「……そんな普通に言われても
困るんだけど。」
「ちょっと痒み紛れたでしょ?」
「いや、今は単純に
それどころじゃないんだけど。」
モブリットの腕の腫れの中心には、
カコの犬歯が
立てられたような
凹みが残されていた。
「蚊はモブリットを
かじってるのに、
私はダメとか
ズルくない?」
「ことあるごとに
そういう変な出来心を
湧かせるのはやめてください。」
モブリットは
噛まれた部分を
摩りながら
苦い顔でそう呟いた。