第3章 時には昔を思い出そうか
目を開けると、真っ白な空間にいた。
そこは、現実味を帯びていない。
「ねぇ」
振り返るとそこには
『え…?』
「どうしてここにいるの?」
幼い頃の私だ。
舞鬼神だったころの私。
『どうして…』
「そんなにあそこは居心地がいい?」
幼い私の右手に握られているのは
白刃。
「なら私が…」
『待って…何する気?』
「壊してあげる」
脇腹に衝撃が走る。
刺されたのだろう。
「戻ろうよ、あの頃に。楽しかったよね。いっぱい殺して」
『ふ…ざけないで…』
「ふざけてないよ?なんでいやなの?あのときはあんなに罪悪感なんてなかったのに」
その言葉に私は目を見開いた。
「そうだ、あの人も…手に入らないなら殺しちゃおうよ」
『やめて!!』
「なんで?みんなみんな私のものにしようよ。だって望んでるよね?」
これは、私の本心?
「幸せになろうよ。ずっと望んでたんだから。だってずっと辛かったんだよ?なら幸せになっても許してくれるよ」
『そんなの望んでない!私はただ…』
「うるさいなぁ…」
振り下ろされた刀を、右手で握り締める。
『消えて!!ここは私の…』
「バカはこれだから…」
幼い私は無邪気な顔で笑った。
「あなたは化物。いずれはこうなる運命だったの。結局は実験体、完全にはなれなかったの。実験体に課せられている運命はみんな同じ、ただ自分の殺戮衝動のままに人を殺す。元々私はそれが強かった」
『どういう…』
「まだわかんないの?」
「あなたはもう、いないのよ。この体は私の物ってこと」