第3章 時には昔を思い出そうか
土「んなこたぁ、知ってんだよ。俺ぁ、例えばの話してんだ」
私の頬から手を離すと、いきなり両腕を盗られ、壁に押し付けられる。
いつの間にか、トシはタバコを吸い終えていたようだ。
私は、そのままの体勢でトシを思い切り睨みつけた。
『・・・なんの真似で?』
土「俺の手、振り払ってみろ」
そうは言われても、男と女じゃ力の差は歴然。いくらこの体が天人であろうが、ベースは私。毎日鍛えているこの男に、抗っても勝てやしない。
土「無理だろ?」
『・・・そうですね』
でも、と言い訳がましく、私は反抗する。
『まず、両腕を盗られるなんて馬鹿な真似、するはずありません。それに、副長は私のことを知っているから、今、こうやってかなりの力を入れられていますけど、普通の男は、まず私の外見で判断します』
私は、いくら筋トレをしても、ほとんど筋肉がつかない。
必要最低限の筋肉、おまけに毎日鍛えているため、脂肪もつかない。
普通に見れば、華奢な部類に入ってしまう私の体。
土「やっぱりわかってねぇな」
『何がですか』
土「お前は頭に血が上ると、前が見えなくなる。普段なら避けられるようなもんでも、怒り狂うと避けられなくなる」
『そんなこと・・・』
土「じゃあ、なんで今、腕盗られた?お前は、俺であっても、隙は見せねぇはずだ。そのお前が、なんでこうなってる?」
その言葉に、私は下を向いた。
土「・・・確かにお前は強ぇよ。真選組の中じゃダントツだ。それでも心配なんだよ。お前はすぐ、厄介事に首突っ込んじまうから・・・」
『以後・・・気をつけます』
でも、それとこれとは・・・と口を開きかけたところで、気がついた。
この話、近藤さんに相談してても絶対何か言われてた。
監察使ってても、多分言われた。
『副長』
土「あ?」
そこで、私は一つの仮定を思いついた。
『もしかして・・・妬いてます?』