第21章 兵長のターン【R18】
「兵長……新兵兵舎に御出でとは、珍しいですね」
未だ眼前の状況が理解できない。
何故ここに兵長が?
私とジャンの逢瀬に関しては黙認していた筈なのに。
「ああ。大切な部下の為ならな、馬のひとつやふたつ……走らせる」
以前から薄々感じていた。
兵長の気持ち。
じわり。
じわり。
半透明だった疑念が色濃く確信へと変わっていく。
「大切な……部下、ね」
ジャンは唸るようにそう呟いて繋いだ手に力を籠めた。
明らかに怒りを含んだ声。
兵長が相手だと云うのに、その言葉からは敬語が消えている。