第6章 村のショウタイ
→呼ぶ。
此処で彼女の名前を呼ばないと、絶対に危ないという信号が僕の頭の中で鳴り出す。鈴欄は、まだか?という顔をしている。目を細め僕を見ていたのだ。その瞳から感じる殺気と期待。僕は、冷や汗しか掻いていない。あとは、あまりにもの殺気で恐怖しか感じられない。
「ネェ、呼ンデヨォ~。」
「……っ……。」
──君は一体何者なんだ??本物の鈴欄はどこに行ったんだ??
僕は、そんな事を思っていた。確かに、目の前にいるのは見た目鈴欄。だけど、中身が違っていたのだ。僕は、悔しくて唇を噛み締める。
「…………ん……。」
「何~???聞コエナイヨォ~???」
「……っ…。り、稟……。」
「呼ンデクレタ!!!嬉シイ!!!」
キャハキャハと笑うように言う鈴欄。だけど、やはり不気味な笑みを浮かべたままだった。その笑みを見ていただけで、心臓が止まりそう。それに、息苦しさを感じる。まるで、心臓を握られたような感じがした。
「モウ少シ、待ッテテネ。」
彼女は、それだけを言って僕の入っている牢屋から出て行ったのだ。僕は、大きな溜息を一つして肩の力を抜く。とりあえず、一段落はした。そして、再び鎖を解くため引っ張り始めたのだ。
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─優稀 終わり─