第3章 キオク
香李の言葉に、蓮の肩が僅かに、ピクリと動く。やっぱり、蓮は何か知っていると確信をする香李。それでも、蓮は足を止めないし答えない。
だけど、蓮が何も言ってこないのは否定も
していないし、肯定もしてないと考える香李。彼女は、彼の後をついて行くだけだった。
お互いに黙ったまま、神社につく。そして、蓮は足を止めて静かに息を吐いた。その様子を不思議に思った香李。どうしたの?と声を掛ける。
「ずっと、黙ってても仕方ねぇな。いつかは、バレるから今の内に言っておく。」
蓮は、そう言って香李の方へと向く。彼女は、彼の表情を見て黙って聞く事にした。今の蓮は、複雑な表情をしていたからだ。
「此処は………この村は………俺が生まれた場所だ。っと、言っても俺が5歳位の時に、出て行ったがな……。」
彼の言葉に、驚く香李。それは、無理もない話だ。蓮が生まれた場所がこんな、悲惨になっているのだから。
「……蓮は……悔しくないの?生まれた場所が、こんな風になって………。」
香李の瞳には、涙が黙っていたが泣く事を堪えていた。蓮は、眼鏡をクイッ!と持ち上げて言った。
「どうだろうな…。悔しいと思うが、心の何処かで、良かったと思っている部分がある。何とも言えねぇよ。」
よく見ると、彼の表情は複雑そうだった。蓮は、彼女に背を向けて歩き出し始めた。香李は、彼の背中をみる。彼の背中から伝わる……。
───寂しさと悔しさが……。
それでも、香李は何も言わずに蓮の後について行く。神社内を、クルクルと回っていたが、稟の姿が見当たらなかった。
「てか………何処にあるんだよ?地下室は……。」