第4章 自然と惹き寄せられる
「はい。そう言えば、
私は自己紹介したことなかったですね。
あの寂れた店で働いているエマです。」
少し冗談めかしてそう言った女性は、
私に手を差し出した。
すぐにその手を握り、
「私も二十歳なんです。
敬語、やめましょうか。」
と、笑顔を向けてみる。
女性はすぐに緩んだ表情を浮かべ、
「同い年!初めてです、同い年の女性が
あの店に来てくれたの!」
と、少し興奮した様子で手を握り返してきた。
女性の熱いくらいの体温が身体に伝わる。
「エマって呼んで下さ……
呼んでね……?」
敬語を言い直す“エマ”の様子は
どこか可愛くて、思わず吹き出した。