第4章 自然と惹き寄せられる
「今だって店抜けて
フラついてるんでしょ?
早く店戻らないと、またいつかみたいに
本持ってかれちゃうよ?」
「うるせぇなぁ。分かってるよ……
ホントにお前は二十歳か?
俺の母ちゃんでもそこまで言わねぇよ。」
男のその言葉に、
堪えきれず小さく笑い声が漏れた。
すると、女性からの暖かい視線を感じ、
少し顔を上げる。
「あ、やっぱりそうだ。
アンさん、ですよね?」
「……覚えてくれてたんですか?」
「勿論。団長が連れて来てくれた、
大事なお客様ですから。」
女性がそう言った途端、
男の大きなため息が聞こえ、視線を向ける。
「なんだよ、お前ら知り合いかよ!
いい大人をからかうんじゃねぇぞ!」
男は怒っているのか笑っているのか
微妙な表情を浮かべ、
路地の奥へ足早に進んで行った。