第21章 第31層~第40層 その3 "喧嘩花火"
聖槍十三騎士団―
このヴィルヘルムという男は確かにそう言った
だがその真偽を問うという考えはジンにはなかった
ただこの場を生き抜く為、剣を振るう
「オイオイ何だよ、聞こえなかったか?俺はお前に名乗れっつったんだよ」
しかしヴィルヘルムは全く声色を変えない
それ所かジンが振るった剣を軽々握って止めてしまった
すかさずジンは目の前にあるヴィルヘルムの腹目掛け蹴り込む
直撃、だが―
「ハッ―」
―ヴィルヘルムは微動だにしなかった
ダメージすら入っていない、異常事態にジンの思考が鈍った
その瞬間に、ジンの身体が浮く
剣を中心に身体は回転するように重力に逆らう
直後、天地が逆になったジンの腹に衝撃が走った
当たった―そんなものではない
全開のジェットエンジンをその身に受けたかのような耐え難い衝撃
既に空中にあった彼の身は呆気なく吹き飛ばされる
後方にあった木を何本も薙ぎ倒し、再び地面に投げ出された
立ち上がりながら意識が残っている事に残酷さと喜びの両方をジンは感じていた
圧倒的すぎるヴィルヘルムの力に、どう対抗するのか
いや、対抗出来なかったとしても周りの環境を利用して逃走するにはどうすれば良いのか
「オイオイそんなモンかよ。もう少し骨のある所くらい見せてくれや」
だが残酷か
何を考える間もなく、ヴィルヘルムはジンの前に現れた