第18章 第21層~第30層 その5 "Hero"
夢を見た―
黄昏の世界は変わらぬ世界を示している
相変わらず自分の浮遊した感覚は抜けない
しかし、何処に行けば良いのか―それは自分が何処にいても分かる事だった
案内もない、記憶も曖昧なのに足取りだけはしっかりしている
そうして私は『 』の元へ辿り着く
ギロチンに繋がれた彼女は危うさと同時に際立った美しさ―孤高ではない孤独を放っていた
故に私はこう思う
―――――触れたい―――――
それが何をもたらすか、薄々感じている筈なのにその思いを止めようなどとは思えない
単に私が彼女に届きたいからだろうか
それとも、彼女はそうするような存在だからなのだろうか
どちらでも構わない
ただそうしたい―たったそれだけの思いで、私は彼女に手を伸ばす
それは少しずつ、少しずつ近付いていき、指先が彼女の頬に触―
(――――!)
そこで手を引いた
私と彼女以外の何者かを感じたのである
遠くに影
輪郭までは分からない
だが、私はその人物を知っている―知っている、知っている
それを感じると共に、私の意識は再び、闇に沈んでいった