第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
部長がボスに槍を向ける
口の先に何があるかは私からは分からないが、真っ直ぐに投げるつもりのようだ
「せっかくケンタの一匹目なんだ。デカイ一撃……決めて…やるっ!!」
紡がれた言葉と共に光を纏った槍が飛んでいく
ボスからしてみれば小さな槍は、真っ直ぐボスの口へ吸い込まれ、ボスを突き抜けた
槍に貫かれたボスは深く響くような、唸りを空中で上げ―甲板へ落ちる事なく、砕け散った
「………ん?」
砕け散った?
目の前にボスの姿は最早ない
という事は倒した…のか?
「いやいやいや」
自分の思考にツッコミ入れてしまう
こう言っては部長に失礼だが、たかが一撃を与えただけで、ボスからHP全てを奪う程ではない筈
だとするならどうして―?
空間が元に戻りゆく中、突如目の前にウィンドウが現れる
それに少し驚きながらも目を通す
『裏ルール、"一本釣り"をクリア。"魚拓"を手に入れました』
「え、と………」
これはどういう事だろうか
今だ事態の整理がつかないままの私に部長が口を開いた
「一本釣り…まぁ確かに、ある意味一撃必殺かもね」
鮪、鰹、その他諸々―釣って船に上げれば実質勝ち、という事だろうか
なってしまった理屈は仕方ない
仕方ないが…
「よっしゃあ!!ここからオレの釣り伝説が始まるぜぇ!!」
本当にこれで良いのだろうか
初めて釣れた一匹に歓喜の声を上げるケンタの裏で、何人ものプレイヤーが唖然とする中、第十層はクリアされ本格的に二桁の層へ舞台を移していくのであった