第1章 プロローグ〜始まりはいつもここから〜
「やけにドジな曲者だな」
耳もとに急に響いた声に、私はハッと目を開ける。
そこには、私をマジマジと見下ろしている眩しい緋色の瞳があった。
「お前、ここで何してる」
「わ、私は……っ」
言いかけてふと我に帰ると、私はこの男の人にすっぽりと抱きかかえられている事に気付いた。
「お、おろしてください‼︎」
「まず、お前の名前を聞くのが先だな」
名乗るまでは、どうやら離してもらえない事を悟った私は、恐る恐る名前を告げた。
「わ、私はルリーと言います」
「そうか、ルリー」
名を告げるまでずっと見下ろしていた緋色の瞳が微かに揺れる。
それと同時に私を抱えていた腕の力が緩み、私を地面に下ろした。
「で、そのルリーはこんな所をよじ登って何をする気だったんだ?」