第16章 episode 14【シド】〜出会い〜
「ん…っ……!!」
突然の事にルリーは目を見開く。
そして、シドの胸を目一杯押しのけた。
二人の口唇が離れると、シドは笑みを浮かべながら、口唇を舌でぺろり、と舐めた。
放心状態のルリーは口元を抑えている……。
「まあ、今回はただの挨拶代わりだ」
シドはさらりとそう告ると、じゃあな、と扉を開けて部屋を出て行った。
(あ、挨拶?!信じられない!)
ルリーは、嵐の様な衝撃に暫くそのまま動くことが出来ない。
夜の宵だけが過ぎて行く部屋で、ただ頭上の花冠だけがゆらゆらと月明かりに揺れていた……