第14章 episode 13-1【ジルとユーリ】〜たかが愛〜
ダンスホールにはジルが既に来ていた。
ルリーはドクドクと高鳴っていた心臓を落ち着かせて、ジルに駆け寄る。
「遅くなってしまい、すみませんでした」
「それでは、早速始めましょうか」
「は、はい……」
ルリーは遅れた事をジルにもっと咎められると思っていたが、ジルは至って平然としている。
ルリーはジルが妙に平然とし過ぎている、と感じた。
しかし、ジルがちらりとこちらを見たので、慌てて差し出されていたジルの手を取った。
不意にぐい……っと腰を引き寄せられ、ジルの胸の中に収まる。
恐る恐る上を向くと、ジルの綺麗な顎のラインが垣間見えた。
「では、始めましょうか」
室内にワルツが流れ出す。
ルリーはジルのしなやかな動きに遅れない様にダンスに集中した。