第2章 始まり
『すいません、気持ちはすごく嬉しいです。でも付き合う事はできないです。』
莉菜を裏切る。そんな事はしたくなかったので、泪は丁寧に謝り、頭を下げた。
秀真先輩が俯いてそっか、とだけ言った。
表情が見えないので泪は少し戸惑う。
「じゃあ、友達になってくんない?」
『それはもちろん、いいです。』
秀真先輩が泪を見つめ笑う。
「よかった、今日の放課後、3-Bに来て。」
それだけ言うと、秀真先輩は去っていった。
突然の告白に泪は少し考えた。
先輩、傷つけたかなー....
放課後、3-Bに行くと秀真先輩だけが、教室に残っていた。
「いらっしゃい。」
『どうしたんですか?』
突然秀真先輩が泪を抱き締め、髪を優しく撫でる。
『ちょ、秀真先輩?』
「佐久間さん、一回だけ....」
秀真先輩が弱々しく呟いた、その意味がどういうことかのか泪はすぐに分かった。
『だ、だめですっ!』
泪は胸を強く押したが離れない。
「俺、佐久間さんのこと本当に好きだったんだ。降られてショックだったけど、佐久間さんに気がないなら諦める。
でも諦める前に一回だけ、俺の最初で最後のお願い。」
消え入りそうな声で見つめてくる。
'一回だけなら'そう考えて泪は小さく頷いた。
クスリと笑い優しく泪を壁へ追いやり唇を合わせる。