第38章 魔の手
凛姫「本当に、悪党っていうのはどこまでも気楽でいいよね」
先程幽助と桑原が戦っていた部屋に、小さな足音をたてながら入ってくる凛姫。
部屋の中央には殺られたままの戸愚呂兄弟が倒れている────ハズだった…。
凛姫「迫真の演技だったよ、戸愚呂兄弟」
凛姫の呼び掛けに、その大男はむくりと起き上がる。
それ見て凛姫は面白そうにニヤリと笑う。
すると、後ろの壁に設置されてある左端のモニターに、一人の男性が映った。
『御苦労…戸愚呂兄弟。見事な演技だったよ』
凛姫「あら、左京さん。一ヶ月ぶりですね」
左京と呼ばれるこの男性。戸愚呂兄弟を雇っているのはこの左京なのだ。
そして、凛姫とは同盟を結んでいる。
"ある事"のために。
戸弟「耳がいいんでね。奴らの作戦を聞いて利用したまでですよ。わざと負けるってのは、思ったよりストレスが溜まるねぇ」
顔を上げれば、上の部屋で垂金が狂ったように笑っている。
戸弟「ところでよかったのかね。あの女のコを逃がしちまって。
あんたの売買ルートから、垂金がこっそり横流しした大事な商品なんだろう?」
左京『かまわん…。これから行う一大興行に比べれば、氷泪石など河原の小石ほどの価値しかない』
戸弟「それを聞いて安心した。そこで本当の依頼主であるアンタに頼みがある。
あの二人と武術会でもう一度戦いたい。今度は本気でね」