第16章 雄英文化祭編
腕の中に閉じ込めた時の感覚が、まだ残っている。
華奢な身体。思っていた以上に柔らかく、温かい。普段は隙のない女が、自分の腕の中にすっぽり収まっている。その事実だけで、胸の奥にあった何かが、じわじわと満たされていくようだった。
もっと抱きしめていたかった。
このまま誰にも見つからない場所に連れていって、自分だけを見ていればいいのにとさえ思った。
もちろん、そんなことをすれば彼女が黙っていないのは分かっている。あの女は、自分の意思を曲げない。誰かに所有されるような生き方を選ぶ人間でもない。
だからこそ、手に入れたいと思う。
誰かに言われたからではなく、自分の意思で。任務だからでも、立場があるからでもなく、彼女自身が自分のところへ来てほしい。
そう思ってしまうくらいには、もうどうしようもなかった。
「……何をニヤニヤしているの?」
隣から、冷ややかな声が飛んできた。
顔を向けると、彼女がじとりとした目でこちらを見上げていた。
どうやら、さっきから自分が満足げな顔をしていたことに気づいていたらしい。
「別に」
「嘘。絶対に何か考えている顔よ」
「テメェには関係ねぇ」
「私のことを考えていたんじゃないの?」
一瞬、言葉に詰まった。
この女。
さらりと、とんでもないことを言いやがる。
「……だったら何だよ」
開き直って答えると、彼女の目がわずかに見開かれた。
ほんの一瞬だけ見せたその反応が、妙に可愛かった。
「本当に、遠慮がなくなったわね」
「今さらだろ」
「以前は、もう少し隠していたと思うけれど」
「隠す必要がなくなったからな」
そう言うと、彼女は呆れたように息を吐いた。
けれど、頬がほんのりと赤い。
それを見逃すほど、今の自分は鈍くなかった。
――ああ、クソ。やっぱり好きだ。
綺麗な顔も、好みの身体も、頭の回転の速さも、時折見せる無防備さも。全部まとめて、どうしようもなく好きだった。
強引すぎる自覚はある。