第16章 雄英文化祭編
後片付けを終える頃になっても、体育館にはまだライブの熱気が残っていた。
ステージに張り巡らされていたケーブルは片付けられ、楽器も元の場所へ戻されている。けれど、観客席のあちこちでは、興奮冷めやらぬ生徒たちが今日の演奏について語り合っていた。
「いやー、マジで最高だったな!」
上鳴が額の汗を拭いながら、満足げに声を上げる。
「特に爆豪のドラムソロ!あそこ、完全に会場を持っていってたよな!」
「だろ!?俺も思った!あの迫力、半端なかった!」
切島が勢いよく頷く。
「ハッ。ったりめーだ」
爆豪はぶっきらぼうに言い返したものの、ドラムスティックを片付ける手つきには、どこか充実感が滲んでいた。
「でも、本当にすごかったよね」
麗日が、まだ少し興奮した様子でステージを振り返る。
「みんな、すっごく楽しそうだった。見ているこっちまで楽しくなっちゃった」
「うん。演奏ももちろんだけど、おもちさんの歌声……」
緑谷は思い出すように、胸の前で両手を握った。
「聴いた瞬間、思わず息をするのも忘れちゃったんだ。あんなに力強いのに、どこか心に直接響くような声で……。最後の高音なんて、本当に鳥肌が立ったよ」
「緑谷、さっきからそればっかりじゃない?」
耳郎が苦笑する。
「ご、ごめん!でも、本当にすごかったから……!」
「いや、分かるけどさ」
耳郎はそう言いながら、少しだけ照れくさそうに笑った。
「一緒に演奏してた私も、あそこまでいくとは思わなかったもん」
その言葉に、周囲の視線が再びおもちへ集まった。
彼女はエリと並んで椅子に腰掛け、差し出された飲み物を受け取っているところだった。
「お姉ちゃん、のど、痛くない?」
エリが心配そうに見上げる。
「大丈夫よ。ありがとう、エリちゃん」
おもちは微笑み、エリの頭をそっと撫でた。
「たくさん歌ったから、少しだけ喉が疲れたけれどね」
「じゃあ、お水いっぱい飲んでね」
「ええ。エリちゃんが心配してくれるなら、ちゃんと飲まなくちゃ」
「うん!」
嬉しそうに笑うエリを見て、おもちの目元が柔らかくなる。