第16章 雄英文化祭編
「…………」
耳郎は、完全に停止した。
「…………」
周囲のクラスメイトたちも、見事なまでに停止していた。
そして、数秒後。
「「「な、なななななっ!?」」」
一斉に爆発した。
「ちょっと待ってぇぇぇ!?」
芦戸が両手で頬を押さえる。
「今、キスした!?したよね!?頬に!?えっ、待って、私たちの目の前で!?」
「お、おいおいおい……!」
切島は顔を真っ赤にしながら、目を白黒させていた。
「すげぇ……!いや、すげぇけど!大胆すぎねぇか!?」
「…………」
上鳴は口を開けたまま、完全に言葉を失っていた。
数秒後、ようやく我に返る。
「え、えええ!?俺、今の見間違いじゃないよな!?おもちさんが耳郎にキスした!?しかも自然に!?何その余裕!?」
「……恐ろしい」
常闇が低く呟いた。
「人の心を乱す術に長けているとは思っていたが、まさかこれほどとは……」
「常闇くん、何か変な解釈してない!?」
瀬呂が突っ込むものの、彼自身も顔が赤い。
一方、飯田は眼鏡を光らせながら、わなわなと震えていた。
「ま、待ちたまえ!公衆の面前で、そのような……!いや、頬へのキスだからといって問題があるわけではないが、しかし、心の準備というものが……!」
「飯田くん、声が裏返ってるよ」
麗日が小声で指摘する。
「う、裏返ってなどいない!」
そう言い返した飯田の耳まで、真っ赤だった。
そして、当の耳郎はというと。
「…………」
まだ固まっていた。
頬に残る柔らかな感触。
近くで見たおもちの顔。
そして、あの、何事もなかったかのような微笑み。
頭の中が真っ白だった。
「……ね?」
おもちが、耳郎の顔を覗き込む。
「……っ!?」
さらに顔が赤くなった。
「な、なに!?今の、なに!?」
「おまじないよ?」
「おまじないの範疇を超えてるでしょ!?」
思わず叫んだ耳郎に、おもちはくすくすと笑った。