第16章 雄英文化祭編
「……おい、耳」
爆豪が声をかけた。
「曲、早く決めろ。ボーカル二人なら、音域も考えねぇといけねぇだろ」
「わかってるって!」
耳郎が振り返る。
「じゃあ、二人の声を生かせる曲を考えないとね!」
「ええ、楽しみだわ」
おもちも微笑んだ。
その言葉を聞き、爆豪は再び視線を逸らした。
「……期待外れのもんにすんなよ」
「もちろん」
彼女は穏やかに答えた。
「爆豪くんのドラムに負けないくらい、素敵な歌を届けるわ」
「……上等だ」
爆豪の口元が、わずかに吊り上がった。
文化祭のライブ。
それは、ただの学校行事ではない。
クラスメイトたちが、それぞれの得意なことを持ち寄り、ひとつのものを作り上げるための舞台だ。
そして、おもちにとっても。
誰かに命じられた任務ではなく、自分の意思で参加する、初めてのステージになるのかもしれなかった。
彼女の歌声が、どんな風に響くのか。
耳郎の音楽と、爆豪のドラムが、どんな風に重なり合うのか。
その日を想像するだけで、クラスメイトたちの胸は高鳴っていた。
雄英高校の文化祭は、少しずつ、確かな形を帯び始めていた。