第16章 雄英文化祭編
ミスコンを見終えたおもちは、エリの手を引きながら野外ステージの周辺を歩いていた。
文化祭は午後に入っても賑わいを見せており、あちらこちらから歓声や笑い声が聞こえてくる。校内の装飾も、各クラスが趣向を凝らした出し物も、どれも普段の雄英とは違う顔を見せていた。
「お姉ちゃん、次はどこに行くの?」
エリが見上げて尋ねる。
「そうねえ。エリちゃんは、何か見たいものがある?」
「うーん……お姉ちゃんと一緒なら、どこでもいい!」
「ふふっ。それじゃあ、もう少し歩いてみましょうか」
おもちは柔らかく笑い、エリの手を握り直した。
そのときだった。
野外ステージから少し離れた通路の端に、見慣れない子どもたちの姿が目に入った。
一番大きな男の子は、五歳くらいだろうか。小さな体に不釣り合いなほどしっかりした足取りで歩いている。その隣には、三歳ほどの男の子が二人。顔立ちも背格好もよく似ていて、どうやら双子らしい。
そして、五歳ほどの男の子は、胸元に抱っこひもを装着し、小さな赤ん坊を抱えていた。
「……あら?」
おもちは足を止めた。
今回の文化祭は、過去のヴィラン襲撃を踏まえ、一般客を入れず、学内関係者のみで開催されている。
教職員の家族が招待されているのだろうか。それとも、どこかの関係者が子どもたちを連れてきたのか。
それ自体は不思議ではない。
ただ、幼い子どもだけで歩いているのは気になった。
周囲を見渡しても、保護者らしき人物は見当たらない。
「エリちゃん、ちょっと待っていてね」
「うん?」
おもちはエリの手を引いたまま、子どもたちへ近づいた。
「こんにちは。あなたたち、こんなところでどうしたの?」
できるだけ警戒させないよう、穏やかな声で話しかける。
すると、五歳ほどの男の子が、はっとしたように振り返った。
「……!」
その顔を見た瞬間。
おもちは、言葉を失った。
鮮やかな赤い瞳。
少しつり上がった目元。意志の強そうな眉。幼いながらも、どこか不機嫌そうに見える顔立ち。
そして、特徴的な金髪。
――爆豪くん?
一瞬、本気でそう思った。