第15章 死穢八齋會
街の喧騒の中を、知崎は苛立ちを隠そうともせず歩いていた。
彼女は数歩後ろをついていく。
逃げ出した少女を探しているはずなのに、知崎の足取りには迷いがなかった。あらかじめ少女が向かいそうな場所に心当たりがあるのかもしれない。
やがて、彼はビルとビルの間にある路地裏へ視線を向けた。
「……いた」
その声につられて、彼女も目を向ける。
薄暗い路地の入口。
そこに、小さな少女が立っていた。
白い髪。
華奢な身体。
怯えきった顔で周囲を見回し、逃げ道を探すように視線を彷徨わせている。
壊理。
彼女は、ようやくその少女を見つけた。
けれど、見つけた瞬間、胸の奥に冷たいものが広がった。
少女の顔には、幼い子どもが浮かべるはずのない恐怖が刻まれていた。
助けを求めたい。
けれど、誰を信じればいいのか分からない。
そんな表情だった。
「……」
彼女は無意識に指先を握り込んだ。
その小さな身体が、あまりにも危うく見えたから。
知崎は、何事もなかったかのように歩き出す。
「待て、壊理」
穏やかな声だった。
その声に、少女の身体がびくりと跳ねる。
彼女は逃げようとした。
けれど、路地から出たところで、通りがかった一人の少年に気づいたらしい。
少女は、ほとんど縋りつくように、その少年の服を掴んだ。
「……たすけて」
消え入りそうな声。
「お願い……」
少年は驚いたように目を見開き、すぐに少女の前へ身を屈めた。
「どうしたの? 大丈夫?」
その顔を見た瞬間、彼女の心臓が大きく跳ねた。
――緑谷君……!!
どうして、ここに。
思わず駆け寄りそうになる身体を、彼女は必死に抑えた。
緑谷出久。
雄英高校のクラスメイト。
そして、今の自分が最も知られてはならない相手の一人。
緑谷の隣には、雄英高校三年生の通形ミリオ――ルミリオンがいた。
二人ともヒーローインターンの最中なのだろう。