第14章 膝にかけた上着
「……そういうことだったのか」
恵に対して感じていた、わずかなもやもや。
それも今は、ほとんど消えていた。
脹相は三つ並んだ椅子の隣にもう一つ椅子を置き、そこへ腰を下ろす。
「……今日は動かさないでおこう」
私の髪にそっと触れる。
「これだけ疲れているんだ。起こすのも可哀想だ」
私の手に、自分の手を重ねる。
「ここにいる」
眠ったままの私の指が、ほんの少し動く。
脹相の指を握るように、かすかに触れた。
「……」
脹相の表情が柔らかくなる。
そのまま、手を握り返す。
「起きるまで待つさ」
足元には、恵の上着。
「これは明日、返せばいい」
そう呟いて、脹相はもう一度私の髪を優しく撫でた。
「今は、ゆっくり寝ていろ」
そうして脹相は、私を動かさず、目を覚ますまで静かに隣にいることにした。