第8章 したいと思ったから
「……なるほど」
「何が?」
「……自分からしてもいいというのは、こういうことか」
「ふふっ」
「……悪くないな」
素直な言葉。
それを聞いて、彼女はまた笑う。
「じゃあ、これからは脹相からもしてね」
「……ああ」
少し間を置いて。
「……努力する」
「努力なんだ?」
「……したいと思うことが多すぎるからな」
真面目な顔で言われて、私は思わず吹き出した。
脹相もつられて笑う。
真面目な顔でそんなことを言われて、私は思わず笑ってしまった。
けれど。
笑っているうちに、胸の奥から別の感情がふわっと湧いてくる。
――可愛い。
昨日まで、キスをするタイミングが分からなくて一日中悩んでいたのに。
今日は、自分からキスをして。
しかも「またしたい」なんて、少し照れながら言っている。
その変化がなんだか嬉しくて。
愛しくて。
「……脹相」
「ん?」
気づけば、私は彼に近づいていた。
そのまま、ぎゅっと抱きつく。
「……?」
突然抱きつかれて、脹相の身体が少しだけ固まる。
「どうした?」
「……ふふ」
胸元に頬を寄せたまま、私は笑う。
「なんでもない」
「……そうか」
脹相の腕が、ゆっくりと私の背中へ回る。
その優しい抱きしめ方に、また胸がいっぱいになる。
私はそのまま顔を上げた。
「……?」
見上げると、脹相と目が合う。
朝の光の中で見る彼の顔は、いつもより少し柔らかく見えた。