第76章 卒業〜告白〜
「だから、もう告白されることなんて、きっとなくなるよ」
脹相が黙って私を見る。
「私は、脹相を不安にさせるようなことをしたくないの」
「……お前が悪いわけではない」
「うん。分かってる」
私は脹相の目を見つめた。
「でも、脹相が嫌な思いをするのは嫌だから。私が誰かに好かれることより、脹相が安心していられることのほうが大事」
脹相の指が、私の手の甲をゆっくり撫でる。
「……お前は、優しすぎる」
「優しいんじゃなくて、脹相が大切なだけだよ」
その言葉に、脹相の表情が揺れた。
嫉妬で硬くなっていた顔が、少しずつほどけていく。
「……そうか」
「うん」
「だが、学校を卒業しても、お前が誰かに好かれる可能性はなくならない」
「えっ」
「お前は魅力的だからな」
真顔で言われて、今度は私が言葉に詰まる。
「それに、学校の外にも人はいる」
「……脹相、安心させようとしてる?」
「事実を言っているだけだ」
「もう」
思わず頬を膨らませると、脹相は少し困ったように目を伏せた。
「だが……」
「うん」
「お前が俺を選んでくれるなら、それでいい」
脹相は私の頬を両手で包み込む。
「誰に何を言われても、お前が俺のところへ帰ってきてくれるなら、俺は大丈夫だ」
「帰るよ」
「……本当に?」
「本当」
私は脹相の手を握り返した。
「私は、脹相のところに帰る。これからもずっと」
脹相はしばらく黙っていた。
やがて、私を引き寄せる。
「……なら、もう少しだけ近くにいてくれ」
「今も隣にいるよ」
「足りない」
低い声でそう言われて、胸がどきりとした。
脹相は私の肩を抱き寄せる。
人の少ない校舎裏で、触れ合う距離が近くなる。
「脹相……」
「すまない。今は、離したくない」
耳元で囁かれて、心臓が大きく跳ねた。
「……私も、離れたくない」
そう答えると、脹相の腕に力がこもる。
しばらくそのままでいると、夕方の風が吹き込んできた。