第61章 ハロウィン〜猫
「……」
脹相の手が止まる。
視線が、鈴へ向く。
そして再び私を見る。
いつの間にか私は、脹相のすぐそばまで移動していた。
小さな頭を俺の胸元に寄せ、そして自然な動作で腰に腕を回す。
「……」
脹相は一瞬、驚いたように目を見開いた。
けれどすぐに、その腕で私の背中を包む。
「……お前は」
「ん……?」
「今日はいつもより、甘えるな」
「そうかな?」
「ああ」
そう言いながらも、脹相は嬉しそうだった。
私の頭に手を置き、今度は少しだけゆっくりと撫でる。
黒い猫耳が、その手の動きに合わせて小さく揺れる。
ちりん。
また鈴が鳴った。
「……可愛いな」
「……また言った?」
「聞こえたか」
「うん」
「……そうか」
脹相は少しだけ照れたように視線を逸らす。
けれど、撫でる手は止めない。
むしろ、私が胸元に頭を預けていることを確かめるように、優しく髪を梳く。
「もう少し、このままでいよう」
「うん」
短い返事だけど、それだけで十分だった。
鈴の音が時折、小さく響く。
その音を聞きながら、脹相は腕の中の恋人を抱きしめる。
黒猫の姿をしているから、というだけではなくて
こうして自分のそばで安心しきったように甘えてくれることが
ただ、それが嬉しかった。