第46章 小脇に抱えて
「あ、脹相!」
伏黒は高専でたまたま脹相と一緒になると、
遠くから彼女の声が聞こえてきた。
恵が顔を上げると、彼女がこちらへ走ってくるのが見える。
「脹相ー!」
「おい、走るな」
恵は反射的に注意した。
だが、彼女はもう止まらない。
脹相のところへ行きたい一心で、まっすぐ走ってくる。
「……ったく」
恵が小さく息を吐いた、その瞬間。
「――わっ!」
彼女の足が段差に引っかかった。
「危ない!」
後ろにいた乙骨が咄嗟に手を伸ばす。
そして――
ぐいっ。
彼女の身体が持ち上がった。
「……」
恵は無言になった。
乙骨は彼女の腰に腕を回し、完全に小脇に抱えるような形で支えている。
しっかりと足が床から浮いている。
「……先輩」
「え?」
「それ、助け方として合ってるんすか?」
「え? だって転びそうだったから」
乙骨は真顔だった。
「だ、ダメだった?え、危なかったよね?」
「まあ、危なかったっすけど……」
恵は彼女を見る。
彼女もぽかんとしている。
「ゆ、憂太……?」
「大丈夫?」
「う、うん……」
「よかった」
乙骨はほっとした顔をするのと反対に、恵は思う。
――完全に小脇に抱えてる。
どう見ても抱き止めているというより、転びそうになった人間を横から回収している。
しかも乙骨本人には悪気も何もない。
普段から妹みたいに可愛がっているせいか、
危ないと思った瞬間に身体が勝手に動いたのだろう。
問題は――
恵は隣を見る。
「……」
脹相が固まっている。
恵は一瞬だけ考えた。