第73章 告白しなかったせいで
翌朝。
いつもなら脹相が起きる頃まで布団にいる。
けれど、その日はまだ朝日も昇りきらない時間に家を出た。
「……行ってきます」
誰も起こさないように、静かに玄関を閉める。
脹相はまだ眠っている。
その方がいいと思った。
顔を合わせれば、きっといつも通り話しかけてしまうから。
それから、少しずつ変わっていった。
朝は早く家を出る。
学校が終われば、そのまま高専へ向かう。
迎えは脹相ではなく、五条に頼んで保護監督の人にしてもらう。
「今日は俺が迎えに行く」
そう言われても、
「大丈夫。五条先生にお願いしてあるから」
と笑う。
忙しい日は、そのまま五条の家に泊まった。
以前なら、
「今日、脹相と寝てもいい?」
と何の躊躇いもなく言っていたのに。
今は言わない。
そして脹相と一緒にいるときも、以前なら、廊下ですれ違えば肩が触れた。
食事をしていれば、自然と隣に座った。
何かを見せるときには、袖を引っ張った。
眠る前には、「おやすみ」と顔を見て笑った。
それが、なくなった。
コツン、と肩がぶつかることすらない。
手が触れそうになれば、私の方から避ける。
脹相の目を見ない。
必要な会話はするし笑いもするが一定の距離を保つ。
まるで今までの距離が最初から間違いだったかのように。